日本版SOX法
日本版SOX法 2009年3月期に導入
企業のリスク管理 「法令順守」最優先 大和総研アンケート
最優先するのは「法令順守」。大和総研が主要上場企業にリスク管理についてアンケート調査したところ、こんな結果が出た。
2004年の調査では「危機管理」が最優先だったが、ライブドア事件など企業不祥事が相次ぐなか、法令違反に気を使う企業が増えている。
米企業改革法(サーベンス・オクスレー法=SOX法)をもとに、日本でも企業の内部統制を強化する日本版SOX法が2009年3月期に導入される。
同法の対応では、「現在進行中」が52%、「検討を開始」が39%。
構築済み(10%)と回答した企業は「米市場に上場している企業に多い」(大和総研経営戦略研究所)という。
『2006年5月31日 日本経済新聞より抜粋』
【解説】
2002年に米国で誕生した企業改革法(サーベンス・オクスレー法=SOX法)の日本版ともいわれる法律が日本版SOX法で、金融庁の企業会計審議会が、2005年7月13日付けで『財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準』の草案として公開しています。
米国のエンロン社やワールドコム社といった企業が、不正会計処理で破綻したことを受けて、2002年7月に米国で施行された企業改革法(サーベンス・オクスレー法:Sarbanes-Oxley)の略称が「SOX法」です。米国に本社のある企業だけでなく、米国で上場している企業も対象です。
米国のSOX法の特徴は、「経営者による企業の年次報告書の開示が適切であることの宣誓」と「内部統制報告書の作成が義務付け」です。
内部統制とは、「標準化」や「手順化」であり、「透明性の確保」です。つまり、経理や財務の処理を誰でもできるように標準化し、経営陣がそれをいつでも自由に閲覧できるようにして、迅速かつスムーズな経営判断を行えるようにしなくてはいけません。さらに、会計監査など第三者の求めに応じて情報開示できる体制を整える必要もあります。
また、金融庁の企業会計審議会が、ITを「内部統制の目的を達成するために不可欠な要素として、内部統制の有効性に係る判断基準」と位置付けています。つまり、日本版SOX法ではITが必須となります。
具体的には、これまで人間の勘やノウハウに頼っていた部分を文書などによって“可視化”し、共有するためにITが活用されるようになります。これによって、経営者は会計が正しくなされているのか判断できるようになりますが、正確な財務諸表作成のためには販売管理等の各部門から正しいデータが集まらなければなりません。
また、規制やチェックが複数入るので、単純に会計ソフトを入れれば済むというようなものでもありません。コンテンツ管理やナレッジ管理、セキュリティ対策など、社内の情報システム全般を見直す必要が出てくるのです。
さらに草案では、内部統制の基本的要素は大きく六つに分類されます。
1.統制環境:組織の気風を決定し、組織内すべてのものの統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の気温的要素の基礎となるもの
2.リスクの評価と対応:組織の目標の達成に影響を与えるすべてのリスクを識別、分析、評価し、リスクに対応する一連のプロセスのこと
3.統制活動:経営者の命令や指示が適切に実行されることを確保するために定められる方針や手続きのこと
4.情報と伝達:必要な情報が組織や関係者に適切に伝えられることを確保すること
5.モニタリング(管理活動):内部統制の有効性を、継続的に監視、評価するプロセスのこと
6.IT(情報技術)の利用:内部統制の他の基本的要素が、有効かつ効率的に機能するために、業務に組み込まれている一連のITを活用すること
米国SOX法で採用されているCOSOキューブというフレームでは、内部統制の基本的要素は1~5までの5つとなっていますが、ITの重要性を考えて、日本版SOX法の基本的要素として、「6.IT(情報技術)の利用」が盛り込まれています。
日本版SOX法が導入されることにより、各企業ともに財務報告への信頼度を高めることが出来ますが、一方で膨大なコスト負担が生じることの経営への影響が懸念されています。先行して導入しているアメリカでは、財務体力に乏しい企業が株式公開を止めて、非公開企業に戻るという事例もあります。
「業務プロセスを整理し、標準化し、それを文書にまとめる。そして、その業務プロセスを通じてあがった財務データを内部では経営判断を誤らせないもの、外部では監査に耐えうるデータとして適切に公開できるようにする。」
これは、理想形ですが、ここまでの形になるためには、相当の年月、コストがかかりそうですね。
最低限必須の部分の文書化、適切な情報開示を2008年決算に向けて行っていく必要があります。
【参考URL】
金融庁HP http://www.fsa.go.jp/
日本版SOX法ポータル http://www.atmarkit.co.jp/news/portal/sox/sox_index.html